ミシェル・ブラス トーヤ ジャポン/洞爺湖

外食好きなら聞いただけで鳥肌が立ちますよね。現代フランス料理界の代表選手、ミシェル・ブラス。

彼が特別視されている理由は色々あります。例えばフランスの超超ド田舎にあるレストランでずーっと三ツ星を維持していること。特に他人の店で働いたことはなく、両親のレストランを手伝いながら見よう見まねで料理を覚えたこと。自身の直感のみで料理を創作していること。天才なんでしょう。当店もミシュラン北海道版で当然に三ツ星。

基本的にずーっと地元に引きこもっているコミュ障シェフなのですが、ウインザーホテルが「洞爺はお宅の田舎にそっくりでっせ」という誘いに乗って視察に来たところ「ワオ!ウチの田舎と一緒やんけ!」ということで、世界で初めての支店を開く運びとなったらしいです。

ちなみに、大阪の三ツ星フレンチのハジメや表参道のレフェルベソンスのシェフが修行したお店でもあります。
ようやく私もこのテーブルにたどり着けました。感無量。
彼の地元のライオール村はナイフの生産で有名です。
ライオール村ではナイフを一生涯に渡って大事に使い続けるらしく、その疑似体験ということで、コース中はナイフを交換しませんとのこと。ソース等がナイフに残った場合にはパンで拭う。
卵と蕎麦粉のパン(?)。彼の子供の頃の原点。母親が作る卵料理が大好きで、その思い出を自分なりの料理で表現したとのこと。しかし別に美味しくなかった。ただのマザコンである。
薄っぺらいやつはパンの皮みたいなもの。パリパリ美味しい。バターもコクが強く美味。
パンはまあ普通。
モリーユ茸を焼いたやつ。旨みが強く食欲がそそられます。
一口で食べるアミューズの連発。この食べさせ方はブラス特有のもので、これまでに何度も写真で見たことがあってずっと憧れていたので嬉しかったです。しかし肝心の味は、美味しいけれども驚きはなかった。

スペシャリテのガルグイユ。ガルグイユとは、ジャガイモと生ハムなどを煮込んだ、ライオール村のあるオーブラック地方の郷土料理ですが、彼は1皿あたり80~90種類の地元植物を使用することにこだわり続け、ガルグイユ≒ミシェル・ブラスと呼ばれるまで昇華させました。とにかく美しくてうっとりする。しかし肝心の味は、美味しいけれども驚きはなかった。花とか苦いだけで別に美味しくないし。
ヒラメとズッキーニ。ヒラメは肉厚のものを低温でじっくり調理しており、歯ごたえから楽しめ素晴らしい。
ズッキーニは花の部分にカニがぎっしり詰め込んであったズルイの一言。文句なし。
フォアグラのポワレ。これは意図が不明。あまりにも普通なフォアグラのポワレ。ポーションが大きい割に味が単調で飽きてくる。付け合せのメロンはとても良い。
タマネギにじっくり火を通して甘みを出した後に黒トリュフのクルート(パンの皮みたいなやつ)、オリーブオイルの泡泡ソース。タマネギは確かに美味しいのですが、黒トリュフの香りは飛んでしまっており、オリーブオイルのソースもコクが無い。うーん。
メインはラム。非常に普通。いや、食材の質や火入れとかは完璧ですごく美味しいんですけれど、「で?」ってカンジです。酒抜きで客単価30,000円を超える店のメインとしては貧弱。
付け合せはアリゴ。ジャガイモのピューレに伸びるチーズを溶かし込み、ニンニクを効かせたもの。これは単純ながらとても美味しい。こんなシンプルな皿がスペシャリテとなり得たのは、やはりホンモノだからだと思いました。

ドンドゥルマみたいに伸びて楽しい。
チーズは10種類以上。
日本酒で洗ったチーズやライオール村のチーズなど、珍しいものを多く楽しめました。
デセール一発目はこちらもスペシャリテのクーラン(「流れ出る」の意)。
焼きたてのビスキュイ(スポンジみたいな柔らかさのビスケット)にナイフを入れるとイチゴのソースが流れ出し、アイスクリームと渾然一体となって舌に働きかける。
2皿目はビスキュイではなく飴細工でコーティングですが、ノリは同じです。
3皿目は、
ハーブのムースやミルク、ミントのシャーベット、イチゴのアイスクリーム、モツァレラチーズのムース。美味しいですがさすがに満腹です。
〆に牛乳のリキュール。超濃厚かつ甘く味付けした牛乳にミントやコーヒーのリキュールを沈めたもの。味が濃くて印象的。おそらく体積あたりのカロリーでは本コースで最も高いのではないでしょうか。バラの砂糖菓子は全然美味しくなかったので殆ど手をつけませんでした。
ボンボン的に酒が含まれた砂糖菓子。特に美味しくはない。
お土産に頂いたヘーゼルナッツの焼き菓子。こちらはサクサクと軽く美味しい。

というわけで、散々期待した割には別に大したことないなあ、ってのが率直な感想です。確かに色とりどりで美しく、独特の世界観を維持し続けているのは素晴らしいと思うのですが、シンプルに「美味しい」が追求できていないと思います。客単価10,000円を超えるフレンチでは美味しいのはあたり前で、それを踏まえた上で独創的であったり斬新であったりして、さらに毎年それが更改されていって初めて三ツ星を維持することができるのだと私は理解していました。当店はその入り口である「美味しくて当たり前」の部分がなってないと思います。ヘストンブルメンタールにせよ、料理の最先端の先端はこういったことが非常に多い。ミシュランも困っているんでしょうね、画期的な皿を探し続けてついに見つけたと思っても大して美味しくない場合、どうすべきか。

色々と考えさせられた3時間でした。


「ザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパ」シリーズ目次


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国内旅行もすごく大事にしています。なんてったって安い。みんなハワイなんか行くだけでなく、日本の名所と美食を巡る人生の豊かさも知って欲しいな。



ミシェル・ブラス トーヤ ジャポンフレンチ / 豊浦駅
夜総合点★★☆☆☆ 2.5