ARZAK/San Sebastián

サン・セバスティアンで代々続くアルサック家。その名を世界に轟かしたのは、1970年代後半に新バスク料理を生み出したフアン・マリ・アルサック。閉鎖的な料理界において、奇特にもレシピの「シェア」を行い、サン・セバスティアンの料理人を率いて世界を目指しました。

結果、ミシュラン3ツ星を守り続け、The World's 50 Best Restaurantsでは8位の快挙。だって、サン・セバスティアンってのは人口18万の地方都市ですよ。日本で言えば苫小牧や出雲。そこに世界トップクラスのレストランが存在するだなんて。

「私と娘と2人で目指すのは、バスクの伝統料理をルーツとした、前衛的で作家性のある料理」と言い切り、「世界の前衛料理を作っているのは私たち」と鼻息が荒い。しびれますね。

一般的にレストランにおける新メニューというのは、シェフが空き時間に考えるものですが、当店においては専門のR&D機関を置き、専任の研究員が化学や物理学、ひいては数学を駆使して日夜新メニューの開発に取り組んでいるのです。「研究室はレストランから独立しています。店の料理人のほとんどが足を踏み入れることのできない、創造と興奮の場です。アイディアはデータバンクから探ります。フェラン・アドリア(知らん奴はググれ)を始めとする料理人仲間や科学者と協力し、未来の料理を目指しています」

なんて魅力的なコンセプト。6ヶ月前から予約して、いよいよ入店!
な、なんかこのファサードとフォント、メタルっぽくないか?
どことなくコーンを彷彿とさせる。

ちなみに当店は旧市街からタクシーで5分ほどで、まあ歩いていたらタクシーが見つかるだろうと甘く見ていたら全然捕まらねえ!というかそもそもタクシーが街にいねえ!仕方なしにタクシー乗り場に向かうとそこにもタクシーがいねえ!予約時間が刻々と迫り、早歩きで向かうことにしたのですが、想像以上に遠く坂道。息も上がってきたころ、たまたま通りかかったタクシーに飛び込み、なんとか15分の遅刻で済みました。やはり海外と東京のタクシーを同等に考えていてはいけませんね。
待ち合いラウンジ。レセプションのオッサンがデブで愛想が悪い。2階がスペイン人、3階が外人、という具合い振り分けているように見えました。英語を話すスタッフが限られている?
テーブルセッティングはとても普通。ちなみに中国人がスニーカーにナイキのジャージで来店してて泡を吹きそうになりました。やめてやめてアジア人として一緒に見られたくないよー。

まあその中国人は極端としても、意外と店内の客はラフな服装でした。私のようにジャケットを着ているのは少数派であり、皆ドレスシャツにスラックスのみ、といった形です。
パンもオリーブオイルも普通。あれれ?
ラズベリーと何か。難しいことしてくる割に、何も感じることはできません。
ガスパチョ。ビンにそのまま口をつけて飲みます。爽やかなトマトとフレッシュなチーズが美味しかった。
マグロとイチゴ。うーん、全然あわない。
ニンジンの何か。そのまんまニンジン。うまくもまずくもなく、ただのニンジンである。コペンハーゲンのGrønbech & Churchillの悪夢を思い出す。
チョリソのラビオリにトニックウォーター。面白いプレゼンテーション、かつ、旨い。
フォアグラにタマネギなど。何をしたいのかわかりかねる。
リンゴとフォアグラとポテトをカリカリの袋に詰め込んだもの。こちらはまあまあ食べられる。
ロブスター。こちらは間違いなく美味しい。ただ、前衛的かと言われるとそうでもなく、どこかで食べたことのある味。
ズッキーニはズッキーニ。工夫なし。
ポーチドエッグ。不可解。シンプルなポーチドエッグなのです。なぜここでポーチドエッグ?当然にエッグセレントのほうがレベルが高い。
イカをライムの葉で包んで蒸し上げたもの。桜餅を連想させますが、葉の香りが不釣合いにイカに移って気持ち悪かった。
唐突に目の前に置かれるタブレット。
打ち寄せる波の動画をバックに、ツナが並べられる。今年一番のシュール。ツナ単体で見ると悪くないんだけれど、シュールすぎる。
つけあわせは印象なし。
ツナを食べ終わって一服していると、突如炎の動画に切り替わる。も、もしや、食べるのが早すぎた?
連れのメインはラム。美味しいけれども、一般に公正妥当な世界8位の料理とは認められません。
私はハト。ハト自体は火入れも良く上々だったのですが、レンガ色のソースがゲロマズで吐きそうになった。どうなってるんだ。
脚にはソースがかかっていないので美味しいのだよ。
これなんだっけ?完全に失念。
悲しい思いをしながらデザートに突入。セイロみたいなのに入った黒い物体。
カットすると、黄色の液体が流れ出る。黒い部分がヘンに甘くて黄色い部分がヘンに酸っぱくて不味い。ヒロタのシュークリームのほうが5倍美味しい。
「デカいトリュフ」と称したデザートまんまやんけ。
アツアツのソースが外壁を少しづつ溶かし、楽しく頂けました。ただ、とにかく甘い。粗暴な砂糖使い。うんざりです。
アイスも何も感じない。
小菓子もそこらへんのコンビニのプレミアムチョコのほうが上。

はあ、がっかりです。ところどころ光るものはあるものの、そりゃあこれだけ高いカネ払ったら当たり前でしょう。1ミリも感激しなかった。というか、日本のレストランのレベルが高すぎるのかもしれません。それらに囲まれて生きる我々は幸せである。

ところで、うんざりするのは料理だけでなく、サービスもです。スタッフの雰囲気が非常に悪い。互いに足を引っ張りあっているカンジ。まるでTBSのアナウンス室のよう。必要な時に必要な説明をしない。必要な時に必要なモノを持ってこない。テーブルウォッチがなっていない。グラスが空っぽなのに無視。隣のアメリカ人夫妻はブチ切れそうになっていました。

1人だけ感じの良い兄ちゃんがいたので彼とだけ話すようにしたのですが、まだ入店3日目の、元ホテルマンとのこと。なるほどね。染まってない。素敵な笑顔。お茶の種類を尋ね、耳慣れない葉の名前を挙げられたので説明を求めると、彼がちょうど良い英単語を探せなかったようで、他のスタッフに聞こうとしたら、3人ぐらいに無視されていました。無視って。。。頑張れ、このレストランを変えられるのはキミだけだ。キミが頂点に立ったときが、このレストランのスタートラインだ。

というわけで、全然プーゥなお店でした。トイレは汚いし、全体的に清掃は行き届いてないし、客層も微妙だし、サービスや食事は前述の通り。ただの田舎のバカ高いレストランです。東京じゃ話にならないことでしょう。


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